クリスチャンである確信を持つには
私はこれまで大勢の大学生や教会に集う方々のカウンセリングをしてきましたが、この経験から気づかされたことは、イエスを信じる祈りをしたことはあっても、自分が本当に救われているのかどうか不確かなまま生きている人が多くいるということです。
このような人たちは、知識や経験が増え、よいクリスチャンとなる努力を重ねているにもかかわらず、心の深いところでは神との関係に自信が持てないでいるのです。
心から神を知りたいと願っているにもかかわらず、自分の救いに確信が持てないクリスチャンが多いのはどうしてでしょうか。私の個人的な見解としては、そのような不確かさの根底には聖書の本質に関する誤解があるように思えます。
聖書が伝える本質的なメッセージは、いわゆる宗教、哲学、道徳の基準といったものではありません。それは、イエスを通して人類にご自身をあらわした創造主である神と私たち人間との、個人的な関係に関するものです。
皆さんの中には、クリスチャンの家庭に生まれ育ち神の存在は信じているけれども、実は神との関係がはっきりしていない、という人もいることでしょう。あるいは、最近イエスを信じたばかりで、まだ自分に何が起こったのかをよく理解していない方もいるでしょうか。どちらであっても、あなたが神との関係に不安を感じているのなら、以下の内容はきっと役に立つはずです。
知的に理解する
神との関係を確信するためには、聖書が伝える良き知らせ(福音)がどのような内容であるのかを知る必要があります。クリスチャンは作り話を事実として熱心に信じているわけではありません。聖書の記述には歴史的根拠があります※1。数多くの優れた学者たちが生涯をかけて、ナザレという田舎町で育ったイエスの生涯、教え、死、復活、この世に与えた影響について調べてきました。
エール大学大学院の宗教学部長であり、歴史家でもあるラトーレット教授は次のように述べています。「人類史上に結んだ実から判断すると、彼(イエス)の短い生涯は、この惑星上でかつてないほどの大きな影響を与えた。これまでも努めて指摘してきたことだが、彼の生涯が与えた影響は、時代が経過するにつれて、弱まるどころか、ますます大きくなっている。何百万もの人々がキリストを通して個人的に人生が変えられ、彼の生涯を模範とした人生を歩み始めている。後の時代に及ぼした結果から見ると、イエスの誕生、生涯、死、復活は、人類史上の最も大切な出来事であったと言わざるを得ない。その影響力から判断すると、イエスは人類の物語の中心人物である。」
歴史にそれほど大きな影響を与えてきたイエスという人物は、いったい何者なのでしょうか。新約聖書によると、イエスは今から2000年ほど前に、聖霊によって処女マリアから生まれました。
イエスが生まれる何百年も前に、イスラエルの偉大な預言者たちは、キリスト(救い主)が来られることを預言していました。旧約聖書にはやがて救い主が来られることが300回以上も述べられています。そしてそれらの預言は、イエスの生涯を通してことごとく成就したのです。
イエスはご自身が神であることを宣言されました。「わたしと父(神)とは一つです」「わたしを見た人は、父(神)を見たのです」と語ったのです※2。
神との関係を確信するためには、イエスに関する聖書の主張を正面から受け止め、イエスが神であり、私たちの罪の身代わりとして死に、葬られ、復活された事実を認める必要があります。イエスは今も生きていて、この時代に生きる私たちの心に住み、罪からの救い主となってくださいました。
神との関係を確信するために、まずはこれらの基礎知識をしっかりと心に刻む必要があります。
感情が果たす役割
神との関係に確信を持つためには、感情に対するバランスの取れた認識を持つことが重要です。感情とは、特定の行為、出来事、経験などに対する、感じ方や反応のことです。人は生まれつき感情をもった存在です。朝起きたときから寝るときまで、人のすることすべてには感情が伴っています。
世の中にはいろいろなタイプの人がいます。積極的で外向的な人もいれば、静かで内向的な人もいます。感情表現が豊かな人もいれば、そうでない人もいます。同じことを見、経験しても、人によってまったく違った反応を示すことはよくあることです。
例えば、使徒パウロは神との出会いにおいて、非常に劇的な体験をしました。彼はそれ以前、イエスに従う者たちを撲滅することに専念していました。けれどもこの劇的な体験のゆえに生き方が180度変えられ、イエスによる神の愛とゆるしのメッセージを至る所で伝える偉大な使徒として、神に用いられるようになったのです。
一方、パウロの弟子のひとりであったテモテは、自分の母親と祖母からイエスについて学びました。幼い頃からイエスが神の子であることを信じて成長したのです。
今日でも、劇的な体験の中でイエスに出会い、麻薬や不品行、その他の悪習慣から急激に解放されたことを証しするクリスチャンたちがいます。彼らの生活が全く変わってしまったという事実が、彼らの主張を正当づけます。
その一方で、自分の部屋や教会でひとり静かにひざまずき、何も劇的な体験を持つことなしに、イエスを心に迎え入れる人も多くいます。私自身もそのようにしてクリスチャンになりました。
年を経ていくうちに、私はさまざまな感情の波を体験しました。喜びにあふれていたときもあれば、悲しみや失望に打ちひしがれていたときもあります。けれども、私はこのような感情を信仰の土台にはしませんでした。なぜなら、感情は人を惑わすことがあるからです。
クリスチャンは「信仰によって生きる」※3 存在だと聖書は教えています。「信仰がなければ、神に喜ばれることはできません」※4 とも書かれています。
ですから、感情を土台とし、感情体験を追い求める生活は、神が喜ばれる信仰による歩みと相反する生活といえます。信仰とは、別の言葉でいえば「信頼」です。私たちの信仰生活は、感情ではなく、 神ご自身と神のことば(聖書)を土台にする必要があるのです。
心深くに隠れているありのままの感情に気づくことは、霊的・情緒的な面での成長に不可欠です。けれども、特別な感情をむやみやたらと求めることは健全とは言えません。神が人に与えられる正当な感情の価値を無視してはなりませんが、信仰生活の土台は神ご自身と神のことば(聖書)であることを、しっかりと心にとめてください。
意志を働かせる
神との関係に確信を持つためには、知性や感情のほかに、意志を働かせることが重要です。このことを理解するために、神との関係を結婚関係に置き換えて考えてみましょう。
ある男性が、結婚しようと思っている相手こそ自分にぴったりの人だと、頭の中で確信しているとしましょう。感情面でも恋をしていて、心から愛しているかもしれません。けれども、結婚関係はこのような知性上の思いや感情だけでは始まりません。結婚には、結婚関係を始めようとする男女の「意志」が必要です。
教会の結婚式では、牧師が結婚しようとしている二人に向かって、それぞれにこう問いかけます。
「夫たる者よ。汝、健やかなるときも、病めるときも、常にこの者を愛し、慈しみ、守り、助け、この世より召されるまで固く節操を保つことを誓いますか。」
「妻たる者よ。汝、健やかなるときも、病めるときも、常にこの者に従い、ともに歩み、助け、固く節操を保つことを誓いますか。」
それぞれが自分の意志の表明として「はい」と答えることで、二人の関係は新しくなります。誓約の「はい」という一語が、二人の関係を夫婦という新しい関係にするのです。
私たちと神との関係においても同じことがいえます。頭の中でイエスが神であり救い主であると認めるだけでは十分ではありません。感情的な体験を持つだけでも不十分です。これらの二つも大切な要素ですが、意志の行為として、イエスを自分自身の罪からの救い主として受け入れて初めて、人は本当の意味でクリスチャンとして歩み始めるのです。
神との関係と結婚関係には違いもあります。結婚は、まず相手を知るという知性から入り、次に感情がわき起こり、最後に意志による決断という順序で進んでいくのが普通でしょう。
しかし神との関係の始まりは、通常は知性から始まり、意志を働かせて信じ、その後にふさわしい感情がついてくることが多いのです。このことを理解しておくことは信仰生活を歩む上でとても役立ちます。
最後に短くまとめましょう。神との関係を確信するには、知性、感情、意志という三つの要素が絡んでいます。罪から救われ、神の子どもとしての新しい関係を始めるには、まずは以下の基礎的な真理を知的なレベルで知る必要があります。
⚫ 神は私たちを造り、私たちを愛しています。
⚫ 人には罪があり、神との間に深い断絶ができています。そのため、人は神を知るこ とができなくなっているのです。
⚫ 人を罪から救うため、神は人となって来られました。それがイエス・キリストです。私 たちはイエスによって神を知り、神の愛を体験することができるようになります。
⚫ あなたも、イエス・キリストを受け入れることによって、神を知り、神の愛を体験する ことができるようになります。
この内容はおわかりでしょうか。あなたはイエス・キリストをあなた自身の罪からの救い主として信じ、受け入れたことはあるでしょうか。あなた自身の罪が完全にゆるされ、神の子どもとされ、永遠に神と生きることができる恵みを、心から信じているでしょうか。
もし、そのことに「はい」と答えることができないのなら、一人で静かになれる場所を見つけ、イエス・キリストをあなた自身の罪からの救い主として信じ、受け入れることをお勧めします。結婚関係を始めるように、あなたの意志を働かせてください。次の祈りを、あなたの心からの祈りとして、神に祈ってみてください。
「神さま、私はあなたとの個人的な関係を始めたいです。私は罪ある人間です。イエスさまが私の身代わりに罰を受け、私の罪をゆるしてくださることを感謝します。あなたが今も生きていて、私を見捨てず、いつまでもいっしょに生きてくださることを信じます。どうかあなたとの新しい関係の中で、私のこれからの人生を導いてください。私をあなたが望むような人に変えてください。アーメン。」
●動画版『クリスチャンである確信を持つためには』もご覧ください。
[著者紹介]ビル・ブライト(1921-2003年)実業家であり、フラー神学大学院の大学院生であったビル・ブライトは、将来社会を導くリーダーに福音を届けるビジョンをもって、妻のヴォネットとカルフォルニア大学ロサンゼルス校で伝道を開始。このムーブメントが全米、世界各国に広がった。ビルとヴォネットは、国際キャンパス・クルセード・フォー・クライストの創設者であり、長年総裁を務めた。多くの著書、小冊子が多数ある。本稿はビル・ブライト博士の著作 “How You Can Be Sure You Are a Christian” の日本語短縮版。
脚注:(1) 聖書の歴史的根拠に関しては、以下の記事をお読みください。
『聖書はなぜ信じられるのか?』
ジョシュ・マクドウェル著, 中村光弘訳, 川端光生監修『徹底検証キリスト教・第1巻』いのちのことば社, 2007 をご参照ください。 (2) ヨハネ10:30,14:9 (3) ローマ1:17 (4) ヘブル11:6
聖書:新改訳聖書2017©️2017新日本聖書刊行会
●個人学習のために
1. なぜクリスチャンの中には「救いの確信」(「神の子」とされ、クリスチャンになったという確固たる信仰)を持てずにいる人がいるのでしょうか。
2. イエス・キリストについて、どのような存在だと信じていますか。イエス・キリストを信じる根拠とは何でしょうか。
3. 以下の聖書箇所を読んでください。イエス・キリストとはどのような人物なのでしょうか。
a. マルコ1:1
b. ヨハネ1:1,14
c. ヨハネ10:30
d. ヨハネ14:6
4. なぜ聖書にイエスの奇跡の記事が載せられたのでしょうか。(ヨハネ20:30,31)
5. なぜイエスは死ぬ必要があったのでしょうか。
a. ヘブル9:22
b. 1ペテロ1:18, 19
c. 1コリント15:3
6. ヨハネ1:12にある2つの動詞「受け入れる」と「信じる」には、どのような関連があるのでしょうか。
7. イエス・キリストの存在は、あなたの人生にとって、どのような意義があると思いますか。私たちが救われているという根拠は、私たちの感じる「感情」にではなく、聖書にあります。以下の聖書箇所が語る、救いの根拠を書き出してみてください。
a. ローマ8:16
b. エペソ1:3-11
c. 1ヨハネ5:11-13
8. イエスがこの地上にいたとき、感情も大切にしていました。以下の2つの聖書箇所で、イエスは感情をどう捉えていたでしょうか。
a. マルコ8:12
b. ルカ10:21
9. 感情に捉われ過ぎると、どのような問題が起こるでしょうか。
10. 神について、さらによく理解するならば、私たちの生き方はどのように変わるのでしょうか。
11. 以下の聖書箇所は「信仰」について、どう定義していますか?
a. ローマ1:17
b. ローマ14:23
c. ヘブル11:6
12. なぜクリスチャンになるためには、意志による決断が必要なのでしょうか。なぜ人々はイエスを信じ、受け入れようとしないのでしょうか。(2コリント4:2-4)
13. どうしたら、私たちがクリスチャンになったと確信することができるのでしょうか。
14. どうすれば、神に人生の主導権をゆだねることができるのでしょうか。
15. 以下の聖書箇所を読んでください。イエスを救い主として信じることにためらいを感じる人に対して、キリストはどう約束を語っているのでしょうか。
a. マタイ16:26,
b. マルコ8:34-38, 10:21, 29-30,
c. ヨハネ3:1-21
16. キリストにある救いについて、どう確信することができますか。
a. ヨハネ3:16,
b. ヨハネ3:16,10:28-29
c. 1ヨハネ5:11-13
17. マタイ21:22を読んでください。この箇所は、実際の救いと、私たちが持つ救いの確信とどのような関連があると説明していますか。
18. 自分の救いに確信が持てないという人はいますか。その人が救いの確信をもつために、今週、あなたにできることは何かありますか。
19. こちらの『なぜクリスチャンになったのですか?』の動画を見て、あなたがどうイエスさまを信じるようになったかを3分間で伝える「救いの証し」の原稿を書いてみましょう。
●グループ・ディスカッションのための質問
1. キリスト教信仰は、聖書と歴史的事実の上に成り立っています。あなたを信じる上で、あなたにとってどのような事実が最も重要だったのでしょうか。
2. キリスト教が、他の宗教と違うところはどこでしょう。キリスト教信仰は、あなたにとってどのような意味があるでしょうか。他宗教との違いに関してはこちらの『聖なるものにつながる』を参考にしてください。
3. クリスチャンは感情ではなく、信仰によって生きる存在です。クリスチャンとして生きる中で、自分の感情とどう向き合ったらいいでしょうか。「信じられる」という感情によってクリスチャン生活を送るならば、どのような問題が起こるでしょう。
4. 神が自分の計画を変えるのではないかと心配して、クリスチャンになることを躊躇している人がいます。あなたの計画とは違うことを行うように、神があなたに語ったことはありますか。自分の計画をやめて、神に従った経験はありますか。神に従った結果、どうなりましたか。
5. 救いの確信を持つことは、なぜ大切なのでしょうか。
6. 聖書のみことばを大切にすることで、あなたの教会生活や証しの生活にどのような変化があるでしょうか。あなたの救いの確信において、神のみことばはどのような役割を果たしていますか。
7. 今、福音を伝えたいと願っている人はいますか。今、その人に福音を伝えるための方法を話し合いましょう。そして福音を伝えたい人のために、互いに祈りましょう。
●『伝わる概念』シリーズ
生き生きとしたクリスチャンとして、以下の概念をまず自分のものとして、次の人に伝えてあげてください。
1. イエスの独自性
2.クリスチャンである確信を持つためには(本稿)
3. 神の愛とゆるしを体験するには ⇦次は
4. 聖霊に満たされるには
5. 聖霊に満たされて歩むには
6. 伝道で実を結ぶには
7. イエスを友だちに紹介するには
8. 大宣教命令を成就するには
9. 信仰によって愛するには
10. 確信をもって祈るには
11. 献金の聖書的意義
11.神の御国に投資する
11.聖書的資産運用